流体と紐付けされた物語


流れの中に物体を置くと、流れは物体表面に沿って流れようとします。しかし、流体の粘性によって、物体表面の境界層では流体がせん断力を受け、それに逆らって仕事をしながら流れます。そのためエネルギーを消耗して減速し、物体後方で剥離します。剥離が起こると、物体後方に回り込もうとした流れが渦になり、流れ去っていくわけです。さて、渦というのは、物体の後方で流体が剥離した結果生じたものなので、流体と相対運動する物体への抵抗を生みます。ところが、翼形はその渦を効果的に発生させ、逆にその渦を利用して揚力を発生させるのです。

歴史や戦争に対して、資料と文献から情報を得て、そこから作られたイメージに囚われることがある。フィクションにせよノンフィクションにせよ、もしくは国家や共同体といった紐付けされた物語にせよ、編集や創作といった作意が一層入っている。その操作されたレイヤー越しに風景を覗き見ている実感があった。流体と相対しつつ運動する物体への抵抗から生み出された渦。流体力学用語を取り上げ、西洋が中世の時代から連綿と用い展開する地理学図像とその変遷を辿り考察する展覧会に着手した。